[コメント] 十三人の刺客(1963/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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宿場町をまるごと借り切っておおがかりな罠を作り、圧倒的多勢を相手にくりひろげられる攻防戦。とくれば、どうやって行列をそこに誘い込むか、どうやって勝とうとするのか、その戦闘の一部始終をこそ楽しみたい。それは確かにある程度かなえられたのだが、違和感も残った。私が期待していたのはもっと純粋に戦略の面白さを追求したアクションものだった。抜き身の刀をあらかじめ隠して置いておくとかっていうようなディテールをたっぷり楽しみたかったのに、余計な味付けがあったのだ。
逃げ場の無い囲いの中で人間が次々となぶり殺されていくのだが、この「なぶられる」というところへの「こだわり」にいや〜な気持ちになっていく。記憶が確かなら、これはこの映画が作られた時代の好みだったように思う(あるいはこの映画はちょっとそういう空気を先取りしていたのかも知れないけど)。「虫ケラ同然の命」という言葉の「ケラ」に感じられる殺伐とした空気。救いがないこと、絶望的なことばかりを声にしたがる閉塞した社会の気分。この「宿場町」という空間こそそういうものの象徴とでも言わんとしたのか、この映画の最大の関心ごとだった「おおがかりな罠」の描写は、どんな奇想に富んだ仕掛けがあるのか?という興趣を上回るほど、寒寒とした「悪意」のごとき印象を与えてくれたのだった。リアル(現実感)な描写を持ち込んだ時代劇であれば、その当時の現実感が臭い立つのも当然か。江戸時代の侍たちより、ちょっと前の日本を思い出させてくれた。
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