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[コメント] 大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン(1966/日)

相当、おもしろい・・・んだが、バルゴンが主役なんですよ。
kiona

 子供の頃ピンと来なくて、その感覚のまま何となく点をつけちゃった方、是非見直すことをお勧めします。

 先進国となった戦後日本が、極めて盲な資本主義的価値観に踊らされ自滅していく、そんな風刺が確かにある。観ているこっちが心配になってしまうぐらい、エゴの描写が生々しい。その意味にあって、単体デビューの際、残念ながら『ゴジラ』に拮抗するほどのアイデンティティを得られなかったこのシリーズは、二作目にして独自性を打ち出せたと言える。

 特にバルゴン、一見、ただのトカゲ。造型に関しては、駄目駄目な大映特撮(だってガメラだってねえ…)の典型例なんだが、それをどう活かすかのアイデアが造型の欠点を補っている。例えば一通り破壊を済まし、立ち止まり体を揺らすバルゴン…なんと瞼が横に閉じてしまう。そしてカメラが引いていくと、街中凍りついているのだ。それから、ガメラとの初の一騎打ち、ちゃんと最初に睨み合うのだ、動物みたく。

 ギャオスもそうだが、大映怪獣の“そこに佇む”怪獣の恐怖というのは、ゴジラが初期に置き忘れてしまったものだ。ちゃんとしてる! のだが、肝心のガメラの扱いが酷い。単なる幕引き。結局人間の手に負えなかったバルゴンをガメラが代わりに退治してくれるのだけれども、そこに何のロジックもない。

 例えばゴジラが正式に人類の味方に転じたのは、『三大怪獣地球最大の決戦』だったわけだけど、転じたこと自体の賛否はともかく、ゴジラが転じるところはちゃんと描かれていた。モスラがギドラという共通の敵の存在を説くが、ゴジラとラドンは聞く耳を持たない。仕方なく、弱いのにたった一匹でキングに立ち向かう健気なモスラ。その姿をみて、やおら立ち上がるゴジラというくだりで。子供向けなりに筋を通すのが本多監督なんです。

 でもこの映画は残念ながら、ガメラが脇役どころか、邪魔者にしかなってない。そこだけがとても残念。そこを除けば、本家に勝るぐらい辛辣で誠実、また、筋にクライムサスペンスが貫徹された稀有な怪獣映画です。

(評価:★3)

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