[コメント] ローズマリーの赤ちゃん(1968/米)
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男と女の子供のに対する価値観の違いもヴァーチャルリアルに描かれている点。そして歴史を見ても明かだが、子供を政具に利用してきた男のDNAを悪魔として進めていった展開。人々の暮らし、産業の発達と共に子供の命の希薄さが蔓延する社会構造の歪みがそこに表現されている。
主に妊婦ローズマリーの不安定な精神状態がヒステリックに描かれていると見えるが、実は妻に寄り添わず俳優業に没頭し、家を破壊するワーカホリック夫のダメッぷりに重点が置かれている。「家庭を犠牲にまでして得た物が一体何なのか?恋人、妻、家族といる時間がいかに大切か君たちは分かっているのか?」とロマンポランスキー監督の心のこもった言葉が目に投げかけられてきたと感じる。
さらに、二人の間の心の開きだけではなく、現代社会に生きる人々の不安を描き出している。世継ぎをローズマリーに生ます為に作中では儀式を用い成し遂げたのだが、利益追求型の資本主義経済の現実世界に置き換えると、それは明日への不安と焦りを巧みに表現していると言える。明日も生きる為に人を蹴落とす、社長という悪魔に憧れる悪魔になりきれない人々の。
…それにしても、ラスト、確かに胸くそ悪いハッピーエンディングだった。が、彼女が産んだ子供だと言う事に変わりはない。ロマンポランスキーは悪魔の子だからといって即座に殺さず子供を守る為に必死に抵抗した母親の母性を描いた。それは、悲劇から生じた人間不信思想を持っている彼が人間の可能性を信じているからだろう。悪魔の子でも良き親に育てられれば、天使にさえ成るのだということを。同じ悲劇を味あわせたくないという気持ちと共に。
2002/9/22
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