靴下男，転送，飛行艇，ツァーク，伴奏器，カツェ，夕暮れの空に舞う最期の息，意味不明なお風呂，そして砂・砂・砂‥‥．忘れられないシーンが満載．おかしな連中ばっかりの中で，ウラジミールって男が斜に構えているようで実は一生懸命で…．転送シーンもいいけれど，夜の惑星のスローモーションもまた歴史に残るワンシーン．笑えるだけじゃない，これは泣けるッ！

しばしば『アブドラジャン』とセットで評価されていますが，どちらかというとあちらはファンタジー色が強い喜劇という印象なのに対して，『キン・ザ・ザ』は結構ソリッドで本格的なＳＦ映画．あらゆる制約の間隙を見事に貫いたスタイルには脱帽です．こいつを前にしては人々に恐怖を与えたり，迫力で押さえ込むようなウェルズ的ＳＦ，あるいはディックの世界すら既に過去の産物のように思えますね（言い換えればアメリカの世紀はもうおしまい？)．間違いなくこれからＳＦはこんな風にぐっと人間に歩み寄って来ることでしょう．それを予感させる「感動作」と言えるのではないでしょうか．