[コメント] 蝶の舌(1999/スペイン)
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印象的で美しいシーンが多いと思った。蝶の舌についての話(森のシーンは明るい陽射しが緑を映えさせてとても美しい。)や、中国人女性の対してのサックスのメロディ、などなどと印象的だ。だが、印象的なシーンは多いのだが、この映画が最終的にはそれらがどう繋がっていくのか分からなかった。エピソードとして見れば印象的だが、本筋と関係があるのか?と感じた。だが、ラストで見事に繋がったと思える。思い返してみると、この映画に無駄なエピソードは見当たらない。後半になると個々のエピソードの重要性がはっきりしてきた。ラストの解釈にしても、この映画の様々な要素を考えると、決して1つの意味合いしか持たないことはないだろう。少年モンチョが「チョウの舌!」と石を投げながら叫ぶラスト。あのラストからは自然の驚異など様々な事柄を教わり、経験をさせてくれた先生に対する気持ちが表現されていると考えると、先生とモンチョの暖かく切ない人間ドラマとしてみることが出来る。また、家族のことも考え、あからさまに「さようなら」と言うのではないところを見ると、家族愛も感じる。これから始まるスペイン内戦を暗示したという解釈もできる。人間関係を引き裂く戦争へのアイロニーを感じることもできる。こういった様々な解釈が頭をよぎるので、その結果非常に痛切に感じた。印象的なエピソードがあったおかげで、別れに悲しみ感動し、と同時に戦争の悲惨さが伝わり切なさを感じた。モノクロでモンチョの表情を写し続けるエンドクレジットもその余韻を残す。短い時間の中だが、詰め込まれた内容からは得るものが多かったと思う。
また、主人公の少年モンチョを演じたマヌエル・ロサノの表情がすごく良かった。あの輝いた目で感情を繊細に表現していた。とにかく、彼の持つ目の輝きを見ると、2500人の中から選ばれたのにも納得だ。フェルナンド・フェルナン・ゴメスも良い。それと、音楽のアレハンドロ・アメナバールだが、彼の多彩さには驚いた。『オープン・ユア・アイズ』の様な映画を監督しつつ、この映画のような柔らかな音楽も作曲する。彼の音楽も自然の映像とマッチしていて良かった。
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