[コメント] 拝啓天皇陛下様(1963/日)
第二次大戦は多くの民草にとって地獄だったろう。だが、それあってこそ生きられた男も確かに存在したのだ。単純で、誰かに誉められたくて、偉そうにしながら淋しがり屋。そんな「のらくろ」みたいな男だ、ヤマショウは。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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戦地は単純な因果律だけが支配する場所だ。強い者が怒鳴り、弱い者が従い罰を甘んじて受ける。その姿はガキ大将と子供たちの関係とほとんど変わることはない。
「天皇の赤子」…ヤマショウを語る時、この言葉は言いえて妙だ。ヤマショウは強弱の関係でしか人生を見られない赤ん坊のような男だった。その人生がああして終わったのは、天の采配であったような気がしてならない。高度成長期の日本は、その後次々と強者と弱者の関係を複雑なものにしていったのだから。田川水泡の『のらくろ』はその中で生きることを是とし、戦場の子供としての立場を自ら降りていったが、ヤマショウにそんな真似ができる訳がなかった。
今、ヤマショウの魂は、天皇を中心とした天国に遊んでいることだろう。或いはそれが本来の天国の姿ではないにしろ、そこでしか安らぎを得られない「赤子」たちは他にも沢山いただろうからだ。
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