[コメント] リリイ・シュシュのすべて(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ウェブサイト上で一般参加者との対話から物語を作り上げた、岩井俊二監督自身のインターネット小説から生まれた作品で、監督自身の惚れ込みようも高く、岩井監督自身「遺作にするなら、これを遺作にしたい」とさえ語っているほど。デジタル撮影された画面の編集も監督らしい巧みさだし、リリィ・シュシュの透明な都会的な不思議な音楽と田園を象徴するドビュッシーの曲の対照も見事。
ただ、内容的にはちょっと凄い。兎に角“痛い”。観るのが辛くなるほどに。古傷を探し出し、えぐられているような痛さを感じた。いじめを目の前にして、無視する事しかしなかった自分。逆にいじめに遭って、誰も助けてくれないと言う絶望…もう20年も前に、誰にも分かってたまるか。と思っていたものが目の前に出されてしまったいうのはなんともやりきれない気分にさせられる。
だけど、だからこそ目が離せなかった。一気に観て脱力。もう二度と観たくない、と言う思いがあふれ出しているのに、目は画面に釘付けにされる。「痛い、痛い、痛い痛い痛い」そう呟きながら観続けた。
何という辛い物語か。一体救いってどこにあるのか。ラストで救いが提示されるのか?
…結局それは明確でないまま。これは決して明るい青春物語じゃない。それどころか、自分の嫌な部分を見せ付けられるようでとてつもなく後味が悪い。 だけど、一つ思ったこと。
そこにいた誰もが皆、救いを求めていたと言うこと。雄一はリリィ・シュシュと言う“アイドル(偶像)”に向かって。修介は暴力に自らを没入させることによって。そして詩織は自分を受け止めるものを探し、それが耐えきれない現実となった時、自分自身を拒否することによって…
誰もがそうだ。誰も現状から逃げようとしている。それぞれがそれぞれの方法を用いて逃げている。少なくとも逃げようとしている。
それはそれで良いのだと思う。逃げることは決して卑怯ではない。 だけど、それを直視する事も時に必要だ。逃げて逃げて逃げ切れるならそれで良い。だけど、現実は必ず追いついてくるのだから。
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