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[コメント] アメリ(2001/仏)

技巧士、技巧に溺れるか?
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画を観てまず気づくことは、主人公を取り巻く人々が相当な奇癖の持ち主ぞろいであること、そしてそれに輪をかけて主人公:アメリが悪戯好きだということだ。

ジュネは「幸せを運ぶ娘」としてのアメリを想定しているのかも判らないが、なかなかどうして、この娘もメルモちゃんではない(苦笑)。40年前のオルゴールやニセのいにしえの恋文を孤独な人々に届けること、世界中を旅する小人人形の写真で父親に楽しみを与えてやること、変人の老人に心和むビデオを届けてやることは、意地悪八百屋をとんでもない目にあわせてやること、恋人でもなんでもない二人の若者をカフェのトイレで痴態をあらわにするまでに燃えさせることと同意義である。そう、全ては彼女の自己満足のための行動であり、つまりはニタリと会心の笑みを洩らすまでのジョークである。

だが、彼女がほんとうに(?)恋をしてしまった場合、この図式は通用するか?答えは残念ながらイエスであった。ひとり遊びしか知らない彼女にとって、彼氏がみつかった場合、彼と気があうかどうか確かめるとか、恋のステップとかは一切無用である。ひたすら彼女の恋は恋愛に到達するためのゲームでしかない(もっとも、今まで彼女が「幸せ」を振りまいた相手からの助力はあるのだが)。結局アメリは不器用なプレイの果てに彼氏を射止める。だが、彼氏がほんとうに彼女にとっての理想の男性になれるかどうかは、ついにこの映画では描かれなかった。描ける筈もない、アメリのゲームはまだ続行中なのだから。

アメリのビルディングス・ロマンを期待する向きには(自分もそうだったのだが)求めるものが違うとしかいえない。結局この映画は、おしゃれに人生を遊ぶ女の子の「夢のような」物語だったのだから。

とりあえず「気持ちのいい」映画を観たいヒト向けの映画でした。

(評価:★3)

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