[コメント] ハリー・ポッターと賢者の石(2001/英=米)
この作品に寄せられる期待は「原作を超える」ことではなく「この目で観る」ことにある。まさしくこれが「待望の映画化」だ。
何もないところから世界を構築していくことの難しさは誰にでも理解できる。対して「脚色」の名の下に、原作を都合の良いように書きかえてしまうことの安直さも容易に推察が可能だ。
しかるに、原作を忠実に再現することの難しさはあまりに語られることが少ない。「世界観を再現する」のではなく、「原作を再現する」のである。
ここで、重要なのは原作のシリーズはまだ始まったばかりで歴史を持っていない―ということだ。コミックヒーローや古典の映画化とは条件が違う。
原作は全世界で大ベストセラーになっている。まさに「待望の映画化」といっていい。しかしここには落とし穴がある。読者でもある観客が望んでいるのは「映画化」であって、「斬新な」ものでも「新解釈」でもない。今、読み終わったばかりの作品に酔ったまま、それを目の当たりに「映像として追体験する」ことこそ、まだ過去のモノにもなっていない作品の「映画化」における「期待」なのだ。
もちろん作品としての完成度も十分な仕上がりになっている。だが、それにも増して素晴らしいのは、常に「原作を再現する」ことを意識し、無理なくきれいにトレースすることに成功していることだ。プロデュースを含め、商業映画の最も良い面の出た映画として、素晴らしいの一言に尽きる。
私の観たかったのは、まさにこういった「映画化」である。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (17 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。