[コメント] マルホランド・ドライブ(2001/米=仏)
この上なく美しい映画。全ての画面に不穏な空気が溢れる。不穏にして、甘美。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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登場人物は皆プロフィールを与えられない。唯一ベティのみが多少の物語(オンタリオ出身で、地元のジルバ・クイーンで、女優を目指してハリウッドへと上京してきて、叔母の留守宅を借りて…)を与えられているが、その頼みの綱のベティ(というかナオミ・ワッツ)すら時に別人格が憑依する。背景や素性など手がかりを与えられないまま登場人物が織りなす不可解な出来事を、我々観客はただ眼前にし、直截的・反射的な感情のリアクションしか許されない。それゆえ、何というか、印象が硬質。ベタベタした軟弱さが廃され、硬質さは気品につながる。
これが「愛の映画」なのかどうかは判らないが、メタ的な意味も含めて「女優」を描いた映画であることは間違いない。その「女優」を扱う手腕が神業で、甘美な香りが匂い立ってくるかのよう。エロい、というより甘美だと感じた。
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