[コメント] イルマーレ(2000/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
遠距離恋愛ならぬ遠”時間”恋愛、なんて言い方してしまえばミもフタもないような気もするけど、そんな物語を支えているものが、日常的にありそうなエピソードであったり、ちっぽけな可愛らしいものであったりするので、しばしSFであることを忘れてしまうくらいにナチュラルな感触。何より強引にドラマティックな盛り上げ方をしてないので、自然に物語に溶け込めるトコロが良い。
手紙のやり取りの繰り返しの中で、お互いに想像で胸を膨らませつつも、父親の死のエピソードや彼女の元カレのエピソードを通して、「見えないもので繋がれているようで、越えられない、変えられない時間」に微妙に心の揺れ動く様がとてもデリケートに描かれていく。結局決定的に彼女が彼をかけがえのない存在だと思い知るのも、彼の死を通してという哀しい展開。「変えられない時間」への無力感、哀しさを描いた上で、そっと差し出すプレゼントのような結末がとても優しい。
クリスマス・カード、手紙、カチューシャ、本、録音機、魚、耳当て、手袋。そんな些細なもののやりとり。そしてそんなモノを通して、相手を少しずつ想像したり理解したり。そんな「モノを通してその向こう側にあるものの理解を深める」事って、とても大切にしたい感覚。個人的に印象に残ったエピソードは、男の方がパソコンから手書きの手紙に変わったトコロと、耳当てを過去の彼女の前でした時に、彼女に笑われるエピソード。それ以外の些細な小道具も、いろいろなカタチで2人の橋渡しをしていて、ほとんど無駄がない。
話や背景などの演出の、いかにもなトレンディ臭がやや鼻につくのが気になるけど、中身はかなり丁寧に作られた映画。この映画のささやかさ、慎ましさは、とても好きデス。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (9 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。