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[コメント] 愛しのローズマリー(2001/独=米)

「だから」と出るべきトコロの字幕が「だらか」となっていた凡ミス発見。だらかってなんだよ!おもしろいからいいけど。でも、公開前にマジで誰も気がつかなかったのかなぁ。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ハルの心の目に映る登場人物のほとんどが美男美女であったこと。それが何よりも嬉しい。まず、そこに「人間というもの」に対する希望を感じる。

最初の方、クラブで生き生きと躍るウォルトを見てマウリシオが言う台詞にこんな感じのものがあった。

「なんであんな身体なのにあんな自信満々なんだよ。」

彼は足の人差し指が長いガールフレンドについてもひどい発言をするわけだが、それが後の尻尾オチとつながった瞬間、なんとも言えない気持ちになった。

彼の差別的な発言の裏側に隠された、とても複雑な気持ち。その発言が実は自分をも否定していたのだという寂しさ。長いあいだ親友にさえ打ちあけられなかった秘密というコンプレックス。ああ、人間ってなんてやっかいで、そして切ない生きものなんだろう。どうして素直な賞賛や憧憬よりも、嫉妬や間違った憎悪へとかられてしまうのだろう。「マウリシオ!お前って奴は…。」と、その瞬間、マウリシオに思いっきり共感して彼を抱きしめたいような気持ちにさえなった。

脇のキャラクターにまでもそのような細かい性格描写をつけてくれた、ということだけでも、この監督がどれだけ「人間というもの」を(愛情を持って)真摯に描こうとしているのかが伝わってくる。あの意地悪な看護婦さんだってお金に目がくらんだ美女だって、きっかけしだいできっと変われるのだと思うし、個人的にはそういった「余地」もちゃんと提示されているように感じた。(ひとりは職業自体がそういうきっかけを得やすいわけだし、もう一人も恋を失った直後なわけだしね。)

また、ローズマリーが美しかったのは、ボランティアをしているから、平和部隊に入ったから、などといった側面だけではなく、何より「自分自身を冷静に見極めたうえで、そのうえできちんと自分を愛している」からだと思う。見極めて「どうせ私なんかダメだ…。」ではなく、見極めて「そんな私を受け入れよう」という。

しかも彼女のその視点は、他者に対しても、たとえば障碍を抱える者に対しても同じだ。既成概念や独善的な思いこみ、やみくもな愛情というモヤのかかった視点ではなく、冷静な視点での「それはそれでアリなのよ。私はそれを(過剰な愛情も憎悪もなく)普通に受け入れるわ。」という視点。そのあたりの考えは、ハルに子どもたちを紹介した後の場面や昔の恋人について語る場面でさりげなく表現されている。

尻尾を触ってみるかと問われてハルが返した答え。そこにも私は、監督たちからのさりげないメッセージを見た気がする。

(評価:★5)

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