[コメント] チョコレート(2001/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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オープニングのタイトルロールから雰囲気の良さを感じる。悲しげな音楽が流れ、暗い映像。この雰囲気が全編に漂い続ける。内容も暗いだけに、この雰囲気が非常にマッチする。
ビリー・ボブ・ソーントンの演技はさすがである。常に落ち着いて相変わらず渋い。ハンク役は無口な役であるが、演技から心の葛藤がしっかりと伝わってくる。本当に演技のうまい俳優だと思う。賞を受賞したのはハル・ベリーであるが、ビリー・ボブの支えが合ったからこそとも思えるくらいだ。もちろん、ハル・ベリーの悲嘆を表現する演技も非常に良い。レティシアが息子を失い泣き叫ぶシーンは心を打つ。
ふたりのラブシーンだが、強烈な何かを感じるシーンだ。ふたりの心の状態も絡んでくるせいもあって、ただ愛を確かめ合うというのとは少し違ったラブシーンである。すごく意味のあるシーンだと思う。決していやらしいような感じでは撮られていないのも良い。ラブシーン以外でもだが、監督のシーン作りのうまさと、カメラの巧さがかなり際立っている。
玄関前の階段に並んで座りながら、チョコレートアイスを食べるラストシーン、ハンクにとって見れば、今まで出来ていなかった「愛する」ということができるようになり、前向きな終わりである。だが、レティシアにとっては非常に複雑な心境であろう。家を立ち退かされ、頼る人間はハンクしかいないという状況。ハンクのことを支えだとは思っているだろうが、夫の死刑執行の看守であった事実は重い。ここでの、レティシアの見せる表情が本当に何とも言えない。笑っているようで、泣いているような微妙な表情。ここでハル・ベリーの良さを本当に実感した。ラストではとても複雑な気持ちになる。レティシアの感情と同様、どうすればいいのだろうか?という問いがのしかかる。
「面白い」映画ではないが、非常に心を打つ作品。傑作。
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