[コメント] ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔(2002/米=ニュージーランド)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
そしてペンはあくまでペンであって、ここでは「カメラ」という意味ではない。
「物語」であって、あえて「映画」という言葉を直接使わなかったのは、映像が物語るのではなく、あくまで物語が無限のイマジネーションを押し広げている、優れた「映像化作品」という印象が強いので。『旅の仲間』でもそれと同じようなことを(否定的な意味も含めつつ)書いたけど、登場人物の発する言葉やアクションを引き金としつつも、イマジネーションがここまで爆発的に生み出されると、良い悪いなんてことはさておき、もはやその魅力には抗い難いものがある。
さらには枝分かれする個々のエピソードを、その中のどこかに焦点を絞るのではなく、とにかくそれぞれを存分に物語ってしまおうという、その気迫に圧倒される。 「徹底的に、トコトンやっちまおう」というのが、この監督の信条なのかどうなのか。他の作品(『ブレインデッド』『乙女の祈り』)においても、鑑賞後には「ここまでやるか!?」という言葉が思わず口をついて出る。
そして「スリルと興奮」。スペクタクル映画としても、もちろん十分魅力的なのだけれど、何よりさまざまなキャラクターによる「ドラマ」が素晴らしい。「信頼」と「不信」との葛藤の中で、ラストで逃げ道を求めるようにさらに屈折していくゴラム、ホビットたちの熱弁に対してでさえ、静観の姿勢をなかなか崩そうとしないエントたち、蛇の舌の奸智と矮小さ、フロドの危うさ・・・。これらの容易にコチラの腰を落ち着かせない種の「ドラマ」が、何よりこの映画においてスリルと興奮を生み出しているように思える。
そして映像は、壮大なドラマの下ではじめて真価を発揮する「忠実なしもべ」。ラスト近くの壮大なスペクタクルも、それ単体の素晴らしさ云々以前に、それぞれが存分に物語られているエピソードが、束になった時の分厚さというものが実感できて得られる類のカタルシスに、「力」を与えられているような気がする。どんなに素晴らしいスペクタクルも、貧弱な物語の下では、取ってつけたものとしか写らないはず。そもそも9時間かけるに値するとコチラを納得させるだけのドラマを語るということは、(例え元になる原作が壮大だとしても)それだけでも容易なことではないだろう。
不可解なロマンス要素を初めとして、難点もいくつかあるとはいえ、二作目にしてようやく積極的に最後まで付き合ってみたいと思うに至る。話の顛末や、最後まで見た後の評価がどうなるか、今から楽しみでもある。(ちなみに原作未だ読んでません)[4.5点]
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