[コメント] めぐりあう時間たち(2002/米)
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異なる場面でのストーリーが次第に一つに収束していく展開といい、淡々としたピアノやストリングスのフレーズが積み重なってくる音楽に、「マグノリア」と非常に似通ったテイストを感じた。
こちらは場面どころか時代さえ異なっているのだが、花や顔の表情をきっかけとした場面転換が巧みで、編集の冴えにワクワクする。
全体を通して行き場のない悲しさが漂い、the hours を always という、至福の時を永遠に封じ込めようとする自殺願望は痛すぎる。どのパートでも側に優しく心配りしている人が居ながらも、それを上回る絶望的な孤独感。これを見た後で、ヴァージニア・ウルフの著作本を抱えて富士の樹海に入って行く人が出なければ良いが。
救いなのは、3人の中でも唯一クラリッサ(メリル・ストリープ)が、報われないと自覚しつつも現実に向き合って生きていたこと。そして現代パートの残りの女性(ルームメイトと娘)がそれぞれに見せた優しさ。クレア・デインズが老いたジュリアン・ムーアを抱きしめたシーンでは堰切ったように涙出ちゃった。
3人の他にも豪華で見せ場盛りだくさんの役者陣。エド・ハリスはおいしい役どころだから当たり前として、特にワン・シーンだけで持っていったトニ・コレット(「シックス・センス」のかあちゃん、七変化がすごい。「チェンジング・レーン」からまたもチェンジング・レーン!)、イギリス俳優らしい気品と繊細さのスティーブン・ディレインが印象深い。
オスカー獲ったキッドマンだが、3人主演と言って差し支えなく、むしろ見せ場的には残り二人の方がおいしい。特に老いたローラがクラリッサを訪ね、二人が向き合って交互にアップが続くシーンは圧巻!演技的には、より細かい表情を見せたジュリアン・ムーアの勝ちだが、悲しみのどん底にいるはずなのに開き直って演技よりも「人間メリル・ストリープ」をさらけ出したかのようなメリル・ストリープのオーラが凄かった。
暗いトーンと自殺肯定で好みが分かれそうだが、人間の心の深淵さと人生の機微をドラマチックに演出してくれたスティーブン・ダルドリーに脱帽。子供使ってるので敬遠してた「リトル・ダンサー」、要チェックと今ごろアセる。
個人的には「シカゴ」や「戦場のピアニスト」より手応えありました。
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