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[コメント] 川の底からこんにちは(2009/日)

「頑張れば誰もが成功を手にする」という繰り言の底が抜けたいま、弱冠26歳の石井裕也が描く「頑張る」の先にあるのは「未来の幸福」などではなく「頑張る今」の連続がもたらす充実感なのだ。そこに嘘が無いぶん、自虐の底からたちあがる「中の下」賛歌が心地よい。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







意味深いシーンやセリフが多々あった。なかでも私の印象に残ったのは「すべて佐和子が悪いのだ」と関係破綻の理由を佐和子ひとり転嫁する健一(遠藤雅)と恋敵友美(鈴木なつみ)に、佐和子の父(志賀廣太郎)が「佐和子のどこが悪いのだ」と執拗に言い寄る雨中の場面。この父親の怒りの言葉にこそ、バブル社会後の先行きの見えない行き詰まり感のなか、加害者から被害者まで「みんな過去が悪いのだ」(=しょうがないのだ)と言い逃れする総逃げ腰化、総単純化の風潮に対する石井裕也の静かだが確かな憤りを感じる。

怒りをいだいている作家は強い。噂には聞いていたが、なるほどポスト山下敦弘として注目に値する新人の登場である。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ちえたか メイシー Ryu-Zen[*] tkcrows[*] けにろん[*] 水那岐[*] セント[*]

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