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[コメント] 歩いても 歩いても(2007/日)

平成版『東京物語』かとも思えるが、そこまで言い切っていいものかと躊躇してしまう出来。思い出しただけでも胸が苦しくなる『東京物語』に対し、こちらはしんみりと涙したものの、人の胸に深い痕跡を残すだけの打撃力がない。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







風呂場の手すりや蝶々など、多少のあざとさは感じるものの、生活雑音にかき消される日常会話など、描き方は非常に面白いと思いました。無理をして聞かなくていい音とか、正直何を言ってるのか分からない母親の愚痴とか、「家の中の会話」が妙にリアルだったし、家の中に無理に入る事になる他人の居心地の悪さ(嫁とか事故で助かった相手とか)も、ちょっと悪趣味な方法ではあるけれども、非常によく描かれていたと思います。いずれ自分もああいう居心地の悪さを感じながら他人の家に入っていく日が来る事を考えると、ここら辺の描写はしつこく、またリアルで、正直私は胸糞が悪くなりました(アウトロー組の役者がまた巧い)。あのかみ合わない会話の応酬は見事としか言い様がない。

しかし口だかヘソだかからじわじわと入ってきて馴染むという壮大なオチが用意されており、締め方としては決して悪くない。けれどもその演出方法により、後味の悪い出来となってしまったように思います。なぜラストはあのような投げやりというか、鑑賞者を信用していないような作りにしたのか。良多の独白は正直いらなかった。その後父と母がどうなったかなんて、鑑賞者の想像に任せてくれよ。そこすっ飛ばして墓場のシーンに持っていっても、何も問題はなかったハズ。あの独白により、なんだかひどく興ざめしてしまいました。勿体無い。

映画って作る人にとっては、本当に大変で難しいものなんでしょうね。今の日本の監督にとって、小津は相当にデカイ壁だろうと思います。でも是枝監督は必死でよじ登ったと思う。偉そうだけど、その行動は素晴らしいと思いました。

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09.02.10記(09.02.09DVD鑑賞)

(評価:★4)

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