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[コメント] 嫌われ松子の一生(2006/日)

極楽浄土のような画には磨きがかかり、ミュージカルかと見紛うかのような心地よい音楽が全編を覆う。さらに骨太なテーマは巧みに脚本に練り込まれた。館内が明るくなるまでひとりの観客も席を立たなかった映画・・まさに映画だ!
sawa:38

「画力」というものが存在すると思う。大抵の撮影現場は煌々と照明が照らされた眩しいくらいの中で撮影される。そしてその素の素材に様々な加工処理が施されて「画」が完成される。

現在、「素」のままで公開される作品はTVの『渡る世間に・・』や韓国の急造TV作品ぐらいだろうか。

前作で彼の「画」に遭遇した私は驚愕した。まるでプリクラの写真に勝手気ままにフレーム加工するように映画を「加工」していた。

本作もソレは健在。それどころか極楽浄土のような画には磨きがかかり、どこひとつとってみても「画」には様々な色彩加工と光処理が施されている。まさに1コマづつ監督が練りに練ったであろう意思が感じられる。ここで感動しない奴は映画青年たぁ言えないだろう。

さらに本作に加わった空中撮影という多彩なアングルも多用し過ぎの感はあったが、「画力」という点では大きく貢献している。ラスト近くの川を遡上していくショットは、現在と過去の登場人物や映像を巧みに挿入し、時空間を越えたショットとして秀逸であった。まさにそれは「松子の一生」というタイトルにふさわしいショットである。

前作ではまだまだキワモノという感じが拭えない「画」ではあったが、本作をもって彼は新しい手法を確立し、ある意味で映画を進化させたとまで言うのは言い過ぎか?

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)りかちゅ[*] TM(H19.1加入)[*] daniel roth[*] Carol Anne[*] ホッチkiss[*] 水那岐[*]

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