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[コメント] ムッシュ・カステラの恋(2000/仏)

芸術を物語にこんなにスマートに取り入れることができるのは、芸術の国フランスならではと思う。
なつめ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ムッシュ・カステラは、日本にもこういうおじさんいるよ……と思わせる身近な人物設定。恋心とマイペースのせいか、見てられない振る舞いをしてクララにどんどん嫌われてってしまうので、いったいこれはどうなってしまうのか心配になる。

映画の中でもカステラ氏自身が触れていることだけど、彼はクララに良く思われたいから芸術を理解しようと努力したわけではない。興味もないのに無理して、努力して、というのとは絶対違うと言える。姪の舞台をみにいった時、熱演をする彼女に惚れたわけで、そこから先、彼女を追いかけているうちに通り道に絵画が登場した、そしてそれを眺めてみると自分はこれが好きだと思った、ただそれだけのこと。ただただ自分の気持ちに正直に、これが好きだ気に入ったと判断できる彼。今まで隠れて見えなかった彼の素敵な部分が自然に浮かび上がってくる後半の展開が心地良い。

自分の舞台にカステラ氏を招いたクララが、彼のいない空席を気にしているところから一転、あの笑顔の素晴らしさったらない。対するカステラ氏は余裕の微笑みで拍手。あの席ではなく別の席で微笑む彼は、「招待されたから来たんじゃないよ。自分がみたいと思ったから自分で買って来たのだ」ということを行動で示したことになる。先日の絵画の件と同様の気持ちの再現。

物語にきしみがなく、穏やかな時間とくすくす笑いをともに体験できる良質な映画。みおわってみると予告のつくりが良くないと改めて思った。カステラ氏の恋だけじゃなくその周りの人間模様も丁寧に描かれているので、邦題もどうかと思う。

(評価:★4)

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