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[コメント] (500)日のサマー(2009/米)

サマーの500日。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画の面白いところは、主人公のひとりであるトムの目線、つまり男目線での恋心が描かれているところだ。しかも彼の純粋な心根や行動は決して映画的でなく、むしろ「そこもうちょっと盛り上げてくれよ、トム」という「映画の声」が聞こえてきそうなくらいに普通で、自分にはそういった普通の男の普通の恋心の動き、行動パターンが面白かった。

しかし、そんなトムの普通さがありながらこの映画がさも普通でないような印象を与えるのは、これはもう間違いなくサマーという小悪魔の成したわざであると言える。見かけは普通だが、全ての男子が一生に一度は体験するといわれる「サマー効果」を発し、その出会いがあたかも運命であるかのように振る舞ってしまうという特性を持つ彼女は、「運命」信者であるトムを、本人にはそんな気はなかったにせよ惑わすには十二分すぎるキャラクターだったと言えよう。そんな彼女の姿をトムの目線で追っかけるわけだから、これはもうどんなに普通の話であったもそれがあたかも道理のように普通じゃない話になってしまうという仕掛けである。その仕掛けに加えた前述のような行動パターンの対比による時系列の組み換えという二重の仕掛けも効いている。サマーの次がオータムという「運命」にもニマッとする。

その意味でこの映画は、劇中での注釈どおり決して「恋物語」などではなく、その原題どおり「サマーの500日」を描いただけの話なのである。それをこんなに面白い映画に仕立て上げたマーク・ウェブは、ミュージカルシーンなど個々の演出には不満を抱かないところもないが、『スパイダーマン』シリーズの新しい監督としてキャスティングされたということもわかるなかなかの逸材であると私は思った。

また主役を演じた2人ジョセフ・ゴードン・レヴィットズーイー・デシャネルをはじめ、友達まで含めた出演者全てが、とにかく画面の中でキマっているというか、その個性をプンプンさせながら、それでいて全く厭味がないというのも素晴らしいと思った。丈の短いパンツを含め、服装のセンスも好きだった。

ちなみに、私もその昔はかなりのザ・スミス信者であった。幸か不幸か、それによる恋愛の発展という事実はなかったが、そのことがこの作品への高い評価に少なからず影響を与えていることも(たとえ最も登場するアルバムがあの悪名高きベストアルバムだとしても)正直に告白しておきたいと思う。あとサラッと登場する「サイコキャンディ」ジャケもベタと言えばベタだけど嬉しかったです。

***

参考までに2人の500日について整理。

1.2人の500日

◆488日目…ベンチにすわる2人。女の指に光る指輪。◆1日目…2人の紹介。◆290日目…悩むトム。友達に相談。サマーに突然「会うのはやめる」と言われたことを告白。◆1日目…会社での出会い。◆3日目…サマーの評判を聞くトム。◆4日目…エレベーターでザ・スミスをきっかけに初めて話す2人。◆8日目…初めてのロングトーク。お互いの紹介。◆154日目…完全にはまった、恋した様子のトム。◆11日目…「サマーを誤解してた。彼女は最高だ」と語るトム。◆22日目…「やめた。尻軽女はごめんだ」と語るトム。◆27日目…カラオケに誘われるトム。◆28日目…カラオケで意気投合する2人。「友達」に。◆31日目…コピー室で初キス。サマーがトム宅に初来訪。◆282日目…イケアできまずい雰囲気の2人。◆34日目…イケアで「真剣に付き合う気はない」とのサマーに「軽い気持ちでのんびりやろう」と。初めての夜。◆35日目…うかれるトム。突然踊りだす。◆303日目…落ち込むトム。◆45日目…絶頂期の2人。◆87日目…シャワー室で楽しむ2人。◆95日目…思い出のベンチ。サマーの腕に絵を描くトム。◆109日目…トム、サマーの部屋へ初来訪。「僕は特別」との思いを強める。◆118日目…車で「僕らの関係は何」と聞くトムに対し「さあ。いいじゃない。幸せでしょ」と答えるサマー。◆259日目…バーでの喧嘩を境にサマーの気持ちに変化が。◆266日目…「ペニス」と叫ぶ2人。◆191日目…美術館、映画館でデートする2人。◆314日目…映画&悪夢をみるトム。◆321日目…トム「お悔やみカード」の担当に。◆167日目…絶好調カードライター、トム。◆322日目…トム「サマーがにくい」と語る。◆345日目…友達の紹介でデートも上の空。◆402日目…友達の結婚式でサマーと再会。パーティのさそい。ここでサマーがブーケを受け取る伏線。◆408日目…期待を胸にパーティに向かうも、サマーの指に光るリングを見て現実を把握するトム。◆440日目…ふて寝するトム。◆441日目…ふて寝するトム。◆441と1/2日目…昼間から酒を買うトム。◆442日目…トム、退社。◆450日目…サマーとの日々を振り返るトム。「卒業」で号泣し、手にも触れさせず「疲れた」と語るサマーの思い出。◆456日目〜就職活動。◆476日目…サマー結婚。◆488日目…思い出のベンチでサマーと再会し「運命じゃなかった」との別れの理由を告げられるトム。2人の別れ。◆500日目…オータムとの運命の出会い。→オータムとの1日目に。

しかしこれでは前後が入り混じり過ぎて分かりにくい。よって次のような形でも整理。

2.トムから見た500日

◆1日目…会社で出会う。◆4日目…エレベーターでザ・スミスをきっかけに初めて話す。◆8日目…初めてのロングトーク。お互いの紹介。◆28日目…カラオケで意気投合。「友達」に。◆31日目…コピー室で初キス。◆34日目…イケアで「真剣に付き合う気はない」とのサマーに「軽い気持ちでのんびりやろう」と。初めての夜。◆絶頂期。◆109日目…初めてサマーの部屋へ。僕は特別だと実感。◆絶好調カードライター期。◆259日目…バーでの喧嘩を境にサマーの気持ちに変化が。◆282日目…サマー「卒業」で号泣。「会うのはやめる」と言われる。◆落ち込み期。◆345日目…友達の紹介でデートも上の空。◆402日目…友達の結婚式でサマーと再会。パーティのさそい。ここでサマーがブーケを受け取る伏線。◆408日目…期待を胸にパーティに向かうも、サマーの指に光るリングを見て現実を把握。◆442日目…退社。◆456日目…就職活動開始。◆476日目…サマー結婚。◆488日目…思い出のベンチでサマーと再会し「運命じゃなかった」との別れの理由を告げられる。◆500日目…オータムとの運命の出会い。→オータムとの1日目に。

しかしこれでも日数だけでは私たちには今ひとつ理解しにくい。そこで再度次のような整理。

3.僕とサマーの1年5か月(トムの日記篇)

◆出会って1週間。サマーはなんとなく気になる存在だ。音楽の趣味も合いそうだし、何かいい感じかも。◆出会って1か月。「友達」…のはずが一気に。彼女って最高だよ。たまらない。◆付き合って1か月。お互い絶好調!◆付き合って3か月目。彼女にとって僕は特別な存在だ。◆付き合って5か月目。仕事も絶好調!◆付き合って7か月。彼女とケンカしてまずい雰囲気に。◆付き合って8か月。彼女に突然フラれて訳が分からない。◆フラれて1か月。最悪落ち込み期。◆フラれて2か月。まだ傷は癒えず。◆フラれて4か月。サマーと偶然再会するも、彼女には新しい恋人が?より落ち込む結果に。◆現実把握後約1か月。嘘に満ちた世界に嫌気がさし退社。◆退社半月後、就活開始。◆フラれて半年、サマー電撃結婚。◆サマー結婚12日後、思い出のベンチで再会。それが別れの理由かよ。◆サマーの結婚から1か月。運命の人(その名もオータム!)との新しい恋の始まり。

こんな感じでどうでしょう。

(評価:★5)

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