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[コメント] 未来世紀ブラジル(1985/英=米)

ドラ息子のちっぽけな反抗。
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







近未来を描いた『ブレードランナー』や『時計じかけのオレンジ』よりも、観ていて思い出したのは『卒業』。

おそらくは大した苦労も知らず、温室で育ってきた御曹司が見た夢。巨大組織、情報省全体を敵にまわしても、夢の中の大きな鎧武者と同じぐらいのものにしか感じていない。それが彼にとっての精一杯の想像力。だからこそ、自分の起こしたアクションのせいで、追っ手の車が衝突し、人が火だるまになっても、彼は何の感情も抱かない。人一人死んでも夢の武者が倒れたのと同じぐらいのものでしかないのだろう。(王道のハリウッド・アクション的展開が続いたなかで、カット終わりで火に包まれた人を追っていたところが印象に残った。)あのラストを迎えたから哀れなのではなく、始めから彼は哀れな存在だった。

全体的に薄っぺらい描写とはじめは思っていたが、そんな彼の姿こそが現代人そのものなのかもしれない。マニュアルや手続きを遵守する役人よりも、管理社会に翻弄されつつも、そこの矛盾に(敢えて)無自覚なまま夢とも現実ともつかぬ今をふわふわと漂う存在のほうが、現代人の姿っぽい。そういった感覚は苦いものではなく、一種の陶酔すらおぼえさせるものなのだろう。確かにあの曲と本作はとてもよくマッチしている。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)新町 華終[*] ぽんしゅう[*] ババロアミルク 林田乃丞 モノリス砥石[*] ダリア[*] 狸の尻尾 けにろん[*] 水那岐[*]

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