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[コメント] 浮雲(1955/日)

こんな破滅的人生に美を感じようとは。じっとりした湿気が画面のこちら側まで伝わってくる。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







仏印の熱帯雨林での出会いに始まった不幸なロマンスは、屋久島の、これまた熱帯雨林での豪雨の中終わる。

義兄に犯されたことで人生の歯車を狂わせた女は、どうしようもないダメ男を愛し、離れることができない。そんなゆき子といい、自分がダメな男であることを十分すぎるほど自覚した富岡といい、幸せになることなど望めないことはわかっていながら破滅的人生へと歩を進めていく。こんな関係さっさとやめちまえ、と思いながら、その絆の強さ深さにはやはり感動を覚えてしまう。

成瀬映画はセットが良いとよく言われるが、この映画は本当に素晴らしい。回想シーンでの仏印の洋館、終戦直後の闇市、娼婦をしていたゆき子が住むバラック、伊香保の温泉街、富岡がおせいと住んでいた長屋、そして屋久島。どれも印象に残る。特に長屋の暗い廊下、ママゴト遊びをする子供たちを傍らに置いた奥行きのあるカットなんか、はっとするほどの強い印象を受けた。

(評価:★4)

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