[コメント] パピヨン(1973/米=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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独房内での闇と一筋の光のコントラスト。刑務所の中と塀越しに見える抜けるような青空。そしてラストのまばゆいばかりの海。これをスクリーンで見ないでどうするというのか。
今観ると話自体は長い。特に一回脱獄した後に再度捕まるくだりは実話だかなんだか知らないが長すぎる。その割に結局彼が捕まった場所は何所なのかすらわからない。あそこに時間をかけるくらいなら、捕まって再度5年の独房生活を言い渡される辺りのくだりにもっと時間を割いて見せて欲しかった。
この作品、勿論マックイーンは凄いのだが俺が感動したのはダスティン・ホフマンの方だ。彼が普通の人間を普通に、リアリティを持って演じきったからこそ見ている我々はそんな彼に自分の姿を投影することができ、またある意味「普通じゃない」意地と執念を持った主人公に対して憧れと尊敬を抱くことが出来るのだ。
この辺は脚本の妙もあるのかもしれない。何しろ劇中ホフマンは結局一度たりともマックイーンの脱獄に積極的に参加したことは無い。つまり彼だけは主人公の行動力に(精神的に支えられていたとしても)直接的に依存したことはないのだ。それはまるで現実世界での友人関係のように。だからこそ俺は最後の崖の上でのホフマンの決断に涙し、見送るホフマンの顔に、これまで自分が経験してきた様々な想いを重ねる事が出来たのだと思う。
ラスト「俺は生きてるぞクソッタレ!」と呟くマックイーンは漢だ。いつの時代にもいる夢を追いかける漢の姿だ。でも崖の上であの表情を見せた後、帰路に付く時のホフマンの背中、あれも間違い無く漢だ。あの背中に、この不景気な世の中で必死に働いている世のサラリーマンの漢達の姿を俺は見た。
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