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[コメント] 3−4X10月(1990/日)

たけしの造形は個性的でタカは没個性、でコワいのは没個性のほうだ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前半はとてもいい。ガダルカナル・タカの造形が素晴らしく、夜の街歩いていて一番危ないのはこういうポロシャツかなんか着ている一見普通げな兄ちゃんだと思わせられる。バーの客への「野糞でもしていろ」は特筆ものだし、「井口って呼べよ」のリフレインも怖い。制作の都合なんだろうけど、後半登場しないのも洒落ていていい(備忘:彼の女はふせえり、映画初出演)。

ガソリンスタンドの恐喝もありがちだが殺伐としているし、二度血塗れにされる無免許でバイク買った花井直考の断片もいい。柳ユーレイ石田ゆり子の、その後多用される寡黙なカップルも危険な感じが漂う。

後半もいい。悪夢のようなビートたけしとの一夜、スナックでたけしがビール瓶で二度殴る長回し、渡嘉敷勝男に命じて抱かせた篠原尚子を殴りまくる一連の極端な嫉妬劇(砂浜での『ソナチネ』風な草野球はこの感情の綾を膨らませて巧い)。どれも上等。空港の検問の切り抜け方も既視感があるが面白い(新聞紙に繰るんだりして、観客にバカだなあと思わせる上手さ)。

がしかし、私にはどうもこの前後半の組合せがしっくりこない。前半の殺伐が異常にいい出来なので、後半はギャグに走り過ぎと感じる。たけしの造形は個性的でタカは没個性的だ。で、本当に怖いのは没個性な人なんだろうと感じる。公開時に観ているのだが、その記憶が歪んでいて、柳と石田がバイクで走り去るのがラストだと覚えていた。前半が気に入っていたからに違いない。その感想は再見しても変わらなかった。

柳のタンクローリーの突撃はよく撮れていて、同伴する石田が結局不思議のままな収束が良好。どうぞ解釈ご勝手にというラストは、柳が死んでも映画をしんみりさせないための選択なのだろう。こういう奴の暴力は増殖する、とも取れる。たけし軍団メインのなか、井川比佐志が妙に浮いているのが面白い。北野映画は半分ぐらいしか観ていないが、本作は一番のお気に入り。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)irodori ゑぎ pori 緑雨[*] けにろん[*] DSCH

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