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[コメント] タロットカード殺人事件(2006/英=米)

「ヨハンソン萌え」のミステリー落語
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ウディ・アレンほど、私生活と作品が連動する映画監督はいない。 私生活が絶好調なら映画も絶好調、私生活に悩み事が多くなれば悩める映画(作品としても観客にとっても)が生れてくる。ミア・ファローと別れるゴタゴタの時期、アメリカを去る直前、ホントに悩みが映画に出ていた。 イギリスに拠点を移した2作を観る限り、なかなか好調のご様子。 いやまあ、「いい所だけど永住する気はない」と劇中言ってるけど(<たぶん本音)。

スカーレット・ヨハンソンを眼鏡ッ子にしてみたり、スク水みたいな水着を着せてみたり、男物のシャツ一枚とかバスタオル一枚とか、ウディおじさんってばどんだけヨハンソンに萌え萌えなんよ、って映画。 しかしさすがに70歳過ぎて自分が恋のお相手をする図々しさはないようで(60歳代最後の想い出なのか『スコルピオンの恋まじない』ではヘレン・ハントの恋のお相手をする図々しさを見せたが)、「パパ」ときたもんだ。

さすがに歳くったなあ。

いや、恋のお相手どうこうもさることながら、作品そのものがね。 人間、歳とると粘り腰がなくなるんだよね。淡白になるというか。 まあ、元々凝った仕掛けは嫌いな人で、大がかりなセットは使わないしオープニングは音楽に文字しか使わない(「タイトルバックに凝ることほど無駄な制作費はない」と発言している)んだが、この映画ではハラハラドキドキのサスペンスすら淡白。

例えば地下室。 パーティー抜け出して倉庫(酒蔵)を調べに行くというエピソードはヒッチコック『汚名』にもあるのだが、「パーティーの酒が減ったら倉庫に取りに来る」というハラハラドキドキがあるわけです。ヒッチ先生の凄いところは「みんながパーティーで酒飲んでるだけでドキドキする」って演出をするところ。ところがこのウディときたら、いきなりワイン取りに来てバタンって扉閉めちゃうんだもん(笑)。 しかし、ここがウディ・アレンの凄いところで、『汚名』なんて知らなくとも気付かなくとも笑えるシーンなんですね。元ネタが分からないと面白くもなんともない昨今のパロディーとは大きく違っていて、気付けばもっと可笑しいという“おかず”。

要するにウディ・アレンの老獪な話芸(ストーリー・テリング)は落語の名人芸。 「映画観たなあ」って満腹感より「毎度馬鹿馬鹿しいお笑いを一席」という軽快さ。 最近(コメディーの場合は)ますますこの傾向が強くなっている気がする。

余談

ブロンドのヨハンソン主役でブルネット(字幕では黒髪)が被害者(姿も出てこない)なんてあたりもヒッチ趣味だなあ。

(評価:★4)

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