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[コメント] アンダーグラウンド(1995/独=仏=ハンガリー)

この感動をどうしてくれよう?以下、レビューに続く。
ネーサン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







地下生活は幸福そのものに見えた。 夢見る未来があることの幸福、友と力あわせる楽しさ。

動物園が空襲にあう。 逃げ出す動物たち。 このシークエンスは、後の「アンダーグラウンド」に住む人々のイメージと重なって仕方がない。

檻の中にいることが幸福である場合もある。 外の世界に出ないほうが、幸せに生きていける場合も。 動物園から救われたチンパンジーが、「アンダーグラウンド」で心安らかに老いることができたのも、 彼が第二の檻を得たからに他ならないだろう。

地下室で、レジスタンスを夢見る人々が送る生き生きとした毎日は、地上で嘘に塗り固められた「栄光」を取り繕う人間と対比される。

なお、これら二つの世界は井戸でつながっている。 水底は幸福な死の世界である。

この映画の文法に従うと、仲たがいした親友が和解するには、死後の世界に行くしかない。 死後の世界は、現実世界と切り離された楽園である。 そこでは永遠に祝祭がつづくのだ。 どこでもない場所、どこでもない時間を漂流しながら。

心底暗いテーマなのだが、ハンガリー舞曲にのせて物語られるとき、なぜだか心が弾んでしまうのだ。 それはおそらく、この映画が現実世界の向こう側を描ききったからでもあるだろう。 地下で、水底で、天上で。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)緑雨[*] プロキオン14[*] けにろん[*] ロープブレーク[*] DSCH ふかひれ[*] sawa:38[*]

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