★4 | ドッペルゲンガー(2003/日) | 野暮ったくなりがちなマルチ画面部の演出が抜群に上手く、目まいがしそうな緊張感が心地よい。今までの意味ありげでいて、実は途中で投げ出してしまっているようなスタイルを棄て、確かなテクニックで押しまくる黒沢監督の吹っ切れように好感が持てる。 [review] | [投票(1)] |
★5 | 銃(2018/日) | 拳銃と雨がモノクロの画に美しく映えるのは、ともに無彩色で低温性を象徴しているからだろう。だからこそ、生温かい体温の気配をはらんだ血の滴りは、見たこともない鮮烈な「赤」で描かれなければならなかった。生身の温度への無意識の渇望が確かに伝わってきた。 [review] | [投票(1)] |
★4 | 陽はまた昇る(2002/日) | 二百数十人の“ひと”に託した優しき挑戦者の熱い思いが嫌味なく伝わってくる。情緒のたれ流しや思い入れの押し付けになりがちな熱血ドラマを、落ち着いたタッチでまとめきった新鋭佐々部清監督の手腕はみごと。新たな娯楽映画の作り手として期待する。 | [投票(1)] |
★3 | 死刑にいたる病(2022/日) | 優しく語りかける顔から徐々に感情が抜け落ちて、大きな泣き袋だけが浮かび上がる阿部サダヲの能面の不気味。獄中から指示を出す例の羊印の傑作を思い出す二番煎じの設定ながら、サイコパスのキャラは準備万端。でもそれだけじゃスリラーにはならない見本。 [review] | [投票(2)] |
★3 | 無頼(2020/日) | 地方のヤクザ一家の組長の半生にダブらせて、戦後の昭和史の熱量を“今どきの若い奴ら”に見せて挑発しようという魂胆なのだろう。私はリアルタイムで“あのとき”の空気を知っているのでとても面白かったが、昭和55年以降生まれの人にはたぶん「???」だろう。 [review] | [投票] |
★4 | 殿、利息でござる!(2016/日) | クスクス笑わせて、気持ちよく泣かせる良質喜劇。思わくや、思い込みのズレを丁寧にあぶり出し、欲や得は捨てがたいという人の業を笑に昇華する爽やかさ。ただの一致団結美談に納めない人間臭さが魅力。羽生結弦登場場面は大成功、文字通り映画に華を添える。 | [投票(2)] |
★3 | いけちゃんとぼく(2009/日) | あまり好きなタッチではないが、結構シビアな題材をポジティブに見せるためには、この浮つき感は必要な「演出の緩み」なのだろう。子供の「内面」の未熟(=柔軟)さを利用して、超「外界」が越境するアイディアも、あまたの凡庸な前例の轍を踏まず成功している。 | [投票(2)] |
★3 | ロボジー(2012/日) | 建て前上、一応やらせや八百長はいけないことになってるわけで、この無邪気な偽ものネタに説得力ある笑いを与えるためには、我々の周りに厳然と存在する欺瞞やインチキを皮肉る毒が必要で、半端なボケではクスクスと笑えてもカタルシスを持った爆笑には至らない。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 嘘八百(2017/日) | 中井貴一と佐々木蔵之介のオッサン臭に栄光の残滓が滲む。庶民とは一流半のプロ集団のことなのだ。クライマックスの競り合戦に緊迫感が足りず、騙し合いの肝である「落胆」と「逆転」の落差が小さいので以降の二転三転も“それなり”に流れてしまった。 | [投票(2)] |
★3 | 船を降りたら彼女の島(2002/日) | このお嬢さん木村佳乃は、何をグジグジ悩んでいるのか最後まで分からず、一人『東京物語』にどっぷりつかる笠智衆もどきのお父さん大杉漣も浮いている。ただ、愛媛には行ってみたいと思ったので、瀬戸内観光PRとしては良い出来ということでしょう。 | [投票(1)] |