[コメント] 東京ゴッドファーザーズ(2003/日)
アニメーションとして傑作だが、よくできたジグソーパズルを組み上げた時の快感が全て。センチメンタリズムをあくまで「他人事」として料理する今敏監督は、ウェルメイド・プレイに肩までつかる快美感を俺には与えてくれなかった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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大体ホームレスと言いながら、彼らにはちゃんと帰るべきところがあるのだ。
家出少女のミユキは言うに及ばず、ギンちゃんは妻も存命中なら、娘も看護婦になるまで成長し、大黒柱の帰りを待っている(その上に年末宝クジ一等当選のオマケつきだ)。ハナちゃんだけが家族を知らないが、ゲイバーのママや仲間たちはそれに匹敵する存在として「いつでも帰っていらっしゃい」と優しい言葉をかけてくれるのだ。彼らが家、もしくは居場所に帰らないのは臆病さゆえに過ぎない。
そんな彼らは真の孤独を知らないから、赤ん坊を親元に返す理由もおおよそ「義憤」である。自分たちの新しい家族として育てたい、という「エゴ」は義憤の下に相殺される。
だから、泣けない。この作品自体が「泣かせ」を強要しないスラップスティック・ストーリーであり、「泣かせ」も含めてカラッと仕上げたドライな作品であるのは百も承知している。だが、少しくらいはジメジメ泣かせてくれたっていいじゃないか、と脳内の浪花節中枢が叫ぶのだ。強制型メロドラマの嫌いな自分だが、映画館を出た家路をあっためられた心の反芻とともに歩きたいと思うこともあるさ。そういう意味では俺はこの映画の観かたを35度ほど見誤った。…そう、コメディとしては凡百のアニメよりずっと面白いのだからね。
葛藤の結果、4つ星。頑張ってくれたスタッフに捧げる。
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