[コメント] レオン(1994/仏=米)
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私はこの映画嫌いじゃない。いや結構好き。ただし、当初はレオンに『ニキータ』の掃除屋ヴィクトールのイメージを追いかけてしまってちょっと肩すかし、という感はあった。あるいは『最後の戦い』の戦士や『グレート・ブルー』のエンゾのイメージまで引きずっていて、これらレオン以前のジャン・レノのキャラクターのある種の聡明さと比べてしまっての幻滅というのは否めないと思う。
また、ベッソンという人は全くシネフィルらしからぬシネアストで、映画狂でない人が「お金のため」でもなく「創造性」を発揮するために映画にぶつかっているという姿勢に受け取れて面白いと思っていた(ホントはどうか知りませんが)。つまり、『グレート・ブルー』を見ても『ニキータ』を見ても、過去の映画的刷り込みの無い人が撮った映画のように見えるのだ。(多分だからこそ、詰まらないコメディパートを挿入して馬鹿にされるのだけど)
なのにこの『レオン』では冒頭からジョン・フランケンハイマー『ブラック・サンデー』の格納庫シーンを彷彿とさせてしまうし、レオンは映画館で『いつも上天気』に涙するし、あげくのはては、あの美しいジョン・フォードの西部劇『リバティ・バランスを撃った男』の科白まで入れた、ジョン・ウェインの形態模写まで見せてしてしまう。このマチルダが「クイズをしよう」と言い始めて、マドンナ、マリリン・モンロー、チャップリン、ジーン・ケリー...と続くシーンはとんでもなく醜悪。
「幼児性」ということであれば、レオンのキャラクタリゼーション以前にこのベッソンの「べたな映画愛の表出」こそ幼稚で滑稽だろう。あるいはアメリカの観客に媚びていると受け取ることも可能だろう。この部分はそりゃあ多くの映画ファンが嫌って当然だと思う。
しかし、私が『レオン』で良いと思える部分を上げるとするなら、ゲーリー・オールドマンの怪演もさることながら、シマの親分トニー役のダニー・アイエロがいつもながら渋い!マチルダが初めて恋を告白するシーンでお腹(お臍)をさすりながら「むずむずする」みたいな台詞を云うシーンも、なかなか悪くない。ラストの銃撃戦から続く『グレート・ブルー』のラストにも似た緊張感溢れる別れのシーンも良い!私はレオンのキャラクターの幼児性もベッソンの幼児性も許せてしまうので、活劇としての画面の強度に焦点をあてて見たとき『レオン』は悪くない、と思う。
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