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[コメント] ジョゼと虎と魚たち(2003/日)

すべての登場人物が同じ温度の中に生きているという心地よさ。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 当然といえば当然なんだが、映画というのは2時間の中にひとつの世界を描き出しているわけだ。その世界の中に生きている人間にはそれぞれに「映画以前」と「映画以後」の人生があって、その「映画以外の時間の流れ」を観客に想像させることによって人物にリアリティが出る。

 どの映画を見ても主人公まわりは概ねこのリアリティを出すことに成功しているんだが、脇役まで徹底されていることはけっこう少なくて、最近で言えば『手紙』(2006)がこの脇役の描写を怠ったことで著しくリアリティを失した作品になっていた。

 極端に言ってしまえば、映画においてある人物が主人公か脇役かという区別は、物語上の視点の問題であって重要度の問題ではないのだ。両方ともがしっかり人間として存在してないと物語として成立してこない。だから作り手は登場するすべての人物を同じ「距離感」と「温度」で作りこむ必要がある。

 この『ジョゼと虎と魚たち』は、この脇役の描き方において非常に優れていると感じた。

 たとえばライセンス藤原が演じたSMマニアのカナイハルキ、乳モミのおっさんやジョゼの近所に住む女の子たち、麻雀店の店長、ツネオの弟、それらの脇役がそれぞれに丁寧なバックグラウンドを設定されており、その設定が性格付けに反映されているからこそ「生きた人物」としてスクリーンに登場することができた。

 物語に余韻を感じることは、登場人物たちの「それ以後の時間」に思いを馳せることだ。この映画を見たあと、観客の多くはツネオと上野樹里のその後、ジョゼと新井浩文の今後の関わり方や、乳母車に背を向けていた女の子がどんな風に育っていくかなどをそれぞれに想像することができたんじゃないだろうか。それが、この映画が脇役まで神経を行き届かせていた証明である。

 また、この映画が身体障害者というデリケートな話題を扱っており、しかも「初めて見た、リアル身障者」とか「壊れ物」とか関係各位が聞いたら沸騰しそうなセリフを織り交ぜながらも多くの観客に一定の評価を得ることができたのは、犬童一心という監督が決して身障者を特別扱いしなかった、というのではなく、「身障者も健常者もひっくるめて、すべての登場人物を特別扱いする」というとても難しい作業をやってのけたからなんじゃないかと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)ちわわ[*] すやすや[*] ムク[*] ぽんしゅう[*] IN4MATION[*] sawa:38[*] けにろん[*] ina

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