[コメント] リアリズムの宿(2003/日)
「フリーター臭」と「童貞力」の魅力。うらぶれた風景に溶けるさえない二人のさえない旅。そして誰にでも覚えのある「間」。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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大して顔見知りでもない人間と二人きりにされてしまう気まずさとか、女の子の出現で妙にテンションが上がったりとか、女の子がいなくなって白けたりとか、青臭い議論が噛み合わない時の気恥ずかしさだとか、実体験の伴わない恋愛論の空虚さとか。
誰もが味わってる絵にならない日常を積み重ねることによって圧倒的共感を呼ぶ。そしてこの二人の会話に一緒に参加して笑ってしまうのだ。
町の住人と旅人は決して深くは関わらない。あくまで通り過ぎるだけ。旅のそんな本質を飾らずに映している。その距離感が慎ましくて、ゆるくて、心地良い。
民家のような旅館であまりの間抜けな旅に突っ込みを入れて笑える若さ。そしてそっと近づいた二人の距離。ちっともドラマチックじゃないちょっとした友情の芽生えに爽やかな後味が残る。
勢いよく突っ込まず、狙い済ましてぼけず、過剰にすかさないないその微妙なテンションで繰り出される二人の漫才。ジャームッシュやカウリスマキのようなオフビートコメディが日本映画で見れて嬉しい。
旅する3人は皆良かったが、特に山下敦弘作品の必須男優、木下役の山本浩司の不器用で魅力的なキャラの存在感と説得力は凄かった。
淡々とした風景と淡々とした出来事。日常の続きにある旅。不器用な人間に注がれる山下敦弘の圧倒的に温かく、照れた視線。とにかくしばらく、この監督について行こうと決めました。
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