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[コメント] 無能の人(1991/日)

芸人としての竹中直人の真骨頂は「間のとり方」だろう。つまり静止と無音である。監督としての竹中直人もベクトルは違うがこれを応用していた。この「感性」誰にでも真似出来るものではない。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







夢に出てくるような濃いキャラクター満載の中で、抑えた芝居ながら抜群の演技力を示した風吹ジュン

絶対に知り合いにはなりたくないキャラクター達の中で、何ともけな気な妻を演じた風吹ジュン

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「親しい友人も居ず、親とも疎遠。この広い宇宙で親子3人きり」

「それでいいじゃないか・・・」

寂しいなあ、でも素敵だよなあ。貧乏だし、将来の展望も無いし、父さんは格好悪いし・・・、何の血縁も無い男女が出会い、子供が出来て家族になった。世間の基準で考えれば決して妻は幸せではない。何故妻は働き、夫と子供を養うのか?逃げる・捨てる事もできるのに・・・

「愛」なんて言葉を使えばとても陳腐になってしまうような関係。「運命」なんて大袈裟な言葉も似合わない。「腐れ縁」「成り行き」これも違う。

私がやっと見つけた言葉は「家族だから」

格好悪い父だけども川原まで迎えに来る息子、手をつなぎ歩き出す父子にもう1本の手が伸びる。役立たずの甲斐性無しの夫を迎えにきた妻。

素敵な家庭とはお世辞にも言えないが、何とも素敵な「家族」の絵だった。感動的な家族愛を描いた作品は星の数ほどあるのだろうが、このラストの絵はとびきりシュールでリアルな家族の姿をサイレントな「間」で描いてみせた。

妻子を持った現在、このラストを再び見直すと心臓を掴み取られたような衝撃を覚える。何のこたぁない親子3人の背中姿に自分を被せてみる。この何のこたぁないシーンに動揺する自分に驚き、自分の家族を考える。

この「感性」誰にでも真似出来るものではない。

(評価:★4)

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