コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 砂と霧の家(2003/米)

なんて人は厄介に出来ているのだろう。まるで行き場をなくして、群れを求めて岸を彷徨う冬のかもめのよう。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一人一人のキャラ造詣(と背景の設定)が面白い。感情移入しそうになる瞬間さえ、どこかしらにシコリが残っていたり、ものすごく不快を感じながらも、どこかしらに突き放せない何かが残っていたり。誰もかれもが同じ位我が強くて独善でどこか半端で、そのくせ幾ばくかの良心のかけらも持ち合わせていたりして。

とりわけベラーニがただの不遇な移民ではなく、大佐という肩書きを持ち合わせていたという設定が、より物語のテイストを複雑にしている。マイノリティであることと、威厳に満ちた頑固親父であることと、母国で何をしてきたのかということがない交ぜになって、何とも言えない感情が湧いてきたり。

ただそれでも彼の死の結末には涙が出そうになった。決着のつけ方の良し悪しは別として(そもそも良し悪しなんてつけられない)。苦痛もなく眠るように、最後の最後までとり残された者の淋しさを味あわせまいとする、伴侶への思いの優しさ。それとは逆に、己はとても安楽なんて言えない、苦痛に満ちた死の方法を選ぶ。それは傍らの伴侶への愛の強さを試す儀式なのか、それとも己に与えた罰なのか。

幻のような砂の城。ただし崩れ去るのは人と人のつながり。「誰のものでもない」と密かに主張するかのように佇む、霧の中の家。人々はしばしどこに本当の家、ホームがあるのかを忘れがちになるものなのだろうか。

(2005/04/02)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (8 人)プロキオン14[*] はしぼそがらす[*] セント[*] tredair JKF[*] スパルタのキツネ[*] ダリア[*] muffler&silencer[消音装置]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。