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[コメント] Ray レイ(2004/米)

ハレルヤ、アイ・ラブ・ユウ・ソウ
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







トラウマ、ドラッグ、仕事と家庭、女、友情とビジネス、黒人問題。何もかもが使い古されたテーマである。南部風魔術的映像表現、盲人の開眼などの映画的味付けも、オリジナル、と云うには程遠い。

しかし、だから何だというのだろう。

そもそも私は、テイラー・ハックフォードになど露ほどの期待もいだいていないし、ジェイミー・フォックスの演技が如何に見事だろうが、そんなものはモノマネに過ぎない、注視すべきに値しない、と心に決めていた。今もそれは変わらない。

ただ、私はレイが好きだ。レイと彼の音楽が大好きだ。だから私はこのドラマを観てとても満足した。昂奮した。喜んだ。私はそういう気持ちを抑えてまで為される客観的な評価などくそ喰らえと思う。私が好きなのはレイであり、ドアーズであり、ブラインド・ウィリー・ジョンソンであって、ハックファードでもオリバー・ストーンでも最近のヴェンダースでもないのだ。

さて、私は伝記映画はハッタリか、綿密な取材か、そのどちらかだと思っている。ハッタリなら突き抜けて欲しいし、綿密取材ならとことん拘って欲しい。

後者を志向したこの伝記映画には、そのトコトンがあった。というか頭がおかしいくらい拘っている。

例えばローウェル・フルスンの顔まで似せて、一体、誰を喜ばせようとしているのか?アトランティック社長アーメット・アーティガンを徹底して男の中の男と崇めたてて(真実、彼は最も偉大なアメリカ国民の一人なのであるが)、如何ほどの日本人が狂喜するというのか?「ホワッド・アイ・セイ パート1&2」や「ナイトタイム・イズ・ライトタイム」のレコーディング秘話を再現されて乱舞する音楽バカが何人いるというのか?

この映画、この辺に一切、手を抜いていないのである。ドキュメンタリばりに綿密で具体的なのである。(対象を「天才!天才!」と馬鹿の一つ覚えみたいに誉めそやすばかりのヘタレ伝記映画ならそれこそ腐るほどある。)それをいちいち描くことで尺が二時間半を越えてしまっても、そんなことはお構いなしといわんばかりに、執拗に描くのである。彼をこれから知ろうとする一般の客にこれっぽっちも媚びてないのだ!(そしてそんな態度が彼らを逆に魅了する!)

音楽映画として。天才音楽家の伝記映画として。

こんなに正しい映画は、私は無いと思う。タイミングについても申し分ない。

(評価:★5)

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