[コメント] クラッシュ(2005/米=独)
こんな良い映画がオスカーを受賞するなんて俄かには信じがたい。ハリウッドも捨てたもんじゃないと思う。これは力のある画面の映画だ。例えば、マット・ディロンが事故車へ向かうシーンもあれが「斜面」だからこそ、映画の画となり映画のエモーションとなるのだ。
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映画を見終った人むけのレビューです。
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或いは「天使のマント」のくだりは寓話として良く出来ているから胸を打つという面も否定しないが、それ以上に、対峙した男二人−錠前屋マイケル・ペーニャとイラン人の商店主−の緊張感みなぎる画面があるからこそ胸を打つのだ。テレビ映画監督役テレンス・ハワードが見せる悔しさと憤怒の表現も特筆すべきだが、これを本作の中である意味最もヒロイックなシーン(若い警官ライアン・フィリップが制止するシーン等を指している)に仕立て上げるという図太い演技・演出こそ特筆すべきなのだ。テレンス・ハワードの「繊細に積み上げ大胆に爆発する演技」を引き出した演出はまさに活劇の演出だ。映画とはとりもなおさず活劇に他ならない。ポール・ハギスはもはや脚本家じゃない、立派な映画監督だ。
監督賞ではなく脚本賞を贈ったという事実を見ても、多くのアカデミー会員は「人種問題」「銃規制」といった社会的テーマに対する真摯なスタンスや、脚本というか映画を見て汲み取れる梗概(粗筋)というか、プロット構成の妙を評価したんだろうと思う。勿論その価値観はそれも必要なことなのだが、「映画」ファンとして本作の良さを上げるのなら「映画ならではの画」「映画ならではの演出」ということに尽きる。近年のアメリカ映画では有数の傑作である。
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