コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] タイヨウのうた(2006/日)

本当に自身で歌い挙げる事が出来るYUIという少女をキャスティングした決断が本作の根幹を成している。「歌う」という行為の伝達能力の高さはあらゆる「演技」を凌駕してしまう。
sawa:38

同じ事は『NANA』の中島美嘉にも言える。「歌う」という事は芝居ではなく、その役者の持つ表現能力を「自然体で」最大限に発揮する事なんだと思う。

本作のYUIは新進気鋭のシンガーソングライター・・・だそうだ。プロの映画人からすれば、その芝居は未熟さに指摘の山が出来るのかもしれない。

だが、アノ駅前の路上ライブでの「密度の濃さ」はいったい何だったのだろう。恐ろしい程の緊張感とやすらぎ感。彼女に対して、まったく予備知識を持たないで見た本作でのアノ熱唱シーンは驚き以外の何物でもなかったのです。

製作者の意図するポイントが「歌」にあったのは確かである。ならば素人の新人歌手を抜擢したキャスティングは賭けに勝ったという事だ。そして不足するであろう「芝居」の面では脇に上手な役者を配置する事で全体のバランスを上手にとってみせた。

特に岸谷五朗はその器用さを存分に発揮できたのではなかろうか。中でも、砂浜のシーンは『新・仁義の墓場』での役者魂に匹敵するような「目線の演技」を披露してくれました。

あのシーンで父親は、これまで確約されていた「最大の庇護者」「最愛の恋人」という地位を少年に明け渡してしまうという「男対男」のシーンでもある訳ですね。

少女・少年・父・母・友人・・・彼等がひと夏で「得たモノ」と「失ったモノ」。2時間という枠の中で小品ではあるが上手にまとめた秀作であると思います。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)ミキ しど[*] 林田乃丞[*] トシ テトラ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。