[コメント] ゆれる(2006/日)
単純な構成にもかかわらず、この先はどう進むのかと怖いもの見たさで、ずるずると引きずりこまれる。多くを語っていないにもかかわらず、兄弟と幼馴染の女性との関係がなんとなく察せられるのだが、それもあくまでも「なんとなく」であって、本当にそうだと思いますか、と問い返されているような、そしてそれを確かめずにはいられないような、気持ちに駆られて見続けた。
オダギリジョー、香川照之という実力を備えた二人の男優をメインにしたシンプルなドラマだが、なんとも言えない生々しさがあって、男二人の兄弟の心の葛藤というか、「兄弟は他人の始まり」という言葉を描いた見せた映画というべきなのだろうか。田舎出身で、兄と二人兄弟の自分にとっては、思い当たること、というほどではないが「うーん」と考え込むところもあって、妙な怖さを感じさせられた。
また、検事と弁護士と被告を挟んだ法廷でのやり取りは秀逸。がらがらの傍聴席ともあいまって、田舎の殺人でもそうでなくてもどっちでもいいような、ありふれた事件を扱っている、日本の裁判の特徴をよくとらえているように思われて、法廷劇としても一流の水準にあるのではないかと思われた。
一方の感情を盛り上げるだけ盛り上げていながら、スパッと切ってみせたラストの締めくくりは、この映画に相応しい終わり方だったのだろうが、観客には返ってもやもやとしたものを残されてつらい。しかし、そういうもんなのだろうなあと、最後までなんとなく思わせられたのだから、やはりたいした映画だと言わざるえない。
見てよかったというよりは、見ただけの価値があった映画だ。
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