[コメント] スパイダーマン3(2007/米)
ロールパンナちゃんは良い心と悪い心を併せ持つ悲劇のヒロインである。彼女はふいにやって来る悪の心に支配されると、その白く美しい姿を黒く染めてしまうのだ。ブラックロールパンナの登場だ。彼女は苦悩する。そして仲間から離れて孤独を選択する孤高のヒロインでもある。
本作のピーターは悪の力強さを楽しんだ。多少の葛藤もあったらしいが、宿主の特性をパワーアップさせるという特徴からか「SEXマシーン」もどきに変貌するピーター。ここら辺はサム・ライミのB級魂が炸裂っていうか悪乗りが暴走する。私にはちょっと辟易させられる時間帯だった。
鑑賞前の私の勝手な思い込みだったのだが、本作は彼の心の葛藤がメインなのだとばかり思っていた。なにせこれだけの長尺だ、充分過ぎる時間だろう。だが、皆さんご指摘のようにサブエピソードをてんこ盛りにしたが故の長尺にしか過ぎなかった。
てんこ盛りが故、各エピソードは透けて見える程薄く底が浅い。皮肉な事に解決せず未消化に終わったサンドマンのエピソードこそ最も感情移入できる始末であった。私はサンドマンの心の葛藤こそもっと取り上げるべきだったと思う。
十字架を背負ったサンドマンの必死の闘い、それに比して結局は「女の子」絡みで悩むお坊ちゃまピーター。私はサンドマンを応援するだろう。第1作目では親近感を覚えた庶民派ヒーローも、ここまで「女の子」しか背負うモノがないヘタレならもう結構だ。もう彼には感情移入など出来ない。
ロールパンナちゃんの哀しみに話を戻そう。彼女は常に憂いを帯び、自らの性を呪い孤独を選ぶ。たかが幼児向けのアニメでのストーリーでだ。おそらく幼児には難し過ぎるだろう。ロールパンナちゃんの哀しみは解消される事は無い。彼女はこれからも悩み続けるしか道はない。
それに対し本作のピーターは楽だった。何だか分からないうちに鐘が鳴って黒から赤に戻ってしまう。葛藤すらしないうちに・・・
嗚呼! 何だか一杯詰め込まれたストーリーに超大作感は充分だったが、鑑賞直後に小腹が空いたようなとても物足りない作品でした。
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