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[コメント] ぐるりのこと。(2008/日)

痛切な悲しみと溢れる愛の映画。飄々と話すカナオの言葉がやたらと心を抉る。間違いなく傑作である。
Master

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バブルが弾けて、経済的に心の余裕がなくなってから、日本は大きく変わった。利己主義が蔓延し、自己責任という言葉が幅を利かせ、勝ち組負け組などと人を峻別し、差別化する事に抵抗を覚えなくなっている。そのためか、自分ではどうしようもないはずの事を抱え込んで過剰に責任を感じる人が多くなっているように思う。一般的に「真面目」とされる人たちが蝕まれる現実。そのような時勢の中で、橋口監督が提示するのはある種の達観なのだ。

他人をどうにかするなんてそんなに上手くいくわけがない。あれは単に自分を納得させたかっただけだ。いくら周りの人から嫌われたって、好きでいてくれる人がいればいいじゃないか。何でそんな風に考える、考えすぎは良くない。カナオ(リリー・フランキー)の言葉はいちいち心に突き刺さる。そして、本作では夫婦だが、信頼できる人がいることの尊さが表現されるのである。

どんな修羅場になっても、相手を思いやり、そばにいる、離れないと言い切れる信頼感。飄々としながらもぶれない姿勢。かくありたいと思った。

(2008.06.26 109シネマズMM横浜)

(評価:★5)

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