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[コメント] 百万円と苦虫女(2008/日)

いやあ面白い。実にさまざまの演出が試みられている。構成がすべて上手くいっているわけではなくダレ場もあるが、そんなことはまあよい。これほど繊細かつ力強い顔面クロースアップを多く持ちえたという一点のみをとっても近年の日本映画にとっては驚くべき事態であり、最大級の賛辞に値する。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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暗闇の廊下を手前に向かってくる嶋田久作(輪郭が光っている!)をトラックダウンで捉えたファーストカット。なんともワクワクする開巻だ。続いて出所した蒼井優がシャバダバ云いながら歩くカットの構図(斜めに走る拘置所の高い壁)もエキサイティング。仮にこの映画を一語で評さなければならないとすれば、その最も適当な語は「エキサイティング」であるかもしれない。横溢しているとまでは云わないが、エキサイティングな演技と画面を多く持っている。

「なぜに他の女とのデート代まで私が出さねばならぬのか」と蒼井が森山未來に問い、気まずい沈黙が流れる「別れ話」のシーン、その沈黙の最中に飲み物の氷がカランと音を立てるタイミングのなんと絶妙なことか。タナダユキが映画の時空間を完全に掌握した瞬間のドキュメントだ。ラストはすばらしい顔面クロースアップであると同時にまさかの「偽り」の切り返し。これには参った!

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ドド[*] りかちゅ[*] おーい粗茶[*] 林田乃丞[*] たろ[*] ペペロンチーノ[*] 水那岐[*]

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