[コメント] 十三人の刺客(2010/日)
迷走する語り手、麻痺する聞き手。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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カメラワークは秀逸、俳優陣も熱演。しかし、稲垣吾郎演じる暴君の残虐な描写に過剰とも思える注力がなされているのに対して、本来描くべき主敵たるライバル侍の腹の探り合いや頭脳戦、あるいは同志が増えていく過程の緊張や融和といった描写が決定的に不足しており、何ともバランスの悪い構成。後半の核となる戦闘シーンは無駄に長く中ダレ気味で、在野の浪人と主人公の甥のとってつけたような友情関係も実に表層的。とりわけ今回の劇伴の安易な使い方に象徴されていると思うが、リアリティの追求と映画としてのダイナミクスの追求は同じ方向に車軸を回さぬと、たやすく脱輪してしまう。劇中の台詞ならいざ知らず、作り手が「迷わず愚かな道を選べ!」では困るのである。暴力のインフレーションに麻痺した観客が梯子を止めない限り、こうした悪貨は今後もますます横行し続けるだろう。黄金時代から半世紀、新世紀を10年経過してもなお、日本映画は相変わらず退化を続けているように思われてならない。
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