[コメント] クロッシング(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作は、3人の警官たちの交錯ということよりも、この「街」そのものが主役ともいえると思うし、「クロッシング」という邦題はピントがずれている。原題の「BROOKLYN'S FINEST」(ブルックリンの警官たち)の方がずっとしっくりくる。
本作の舞台となった、犯罪が日常茶飯事というよりも犯罪そのものが日常となったスラムは、まさにかかわるものすべてをマイナスの世界に引きずり込むというか、何もかも押し流すような巨大な負のベクトル、それ自体に思えてしまった。
ラスト、3人の警官のうち、一人は金欲しさに強盗まがいの真似をして撃ち殺され、もう一人は復讐心にとりつかれ私怨を晴らしている最中に他の警官に撃たれる。(この顛末はちょっとあざといが)
そして最後の一人のみが監禁されていた3人の女性を救い出し唯一生還する。まるで冒頭の警官の不祥事を吹き飛ばすような活躍ぶりだったが、しかし、これをそこへかきたてたものは一体なんだったのか?前段の新人警官をかばって責任をすべてかぶろうとした、その動機は一体なんだったのか?
それはとても正義や良心には見えない。それよりも、将来への絶望、孤独、投げやりなどなど、金欲や復讐よりももっと負の感情を感じさせるような諦念がにじみ出て、むしろ捨て鉢な行為の、結果オーライにしか見えなかった。
この点ではリチャード・ギアのうだつの上がらなさ、冴えない感じを身体中で表した演技はうまいと思う。
見終わって、そういう負の感情にどよーんと身体中を縛られつつも、どっしりとした見応えを感じさせる一本だった。
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