[コメント] ソーシャル・ネットワーク(2010/米)
見せ方は上手い。若き米国エリートのスノッブな世界やオタクが臆せず巨大プロジェクトを仕上げてゆく様をスピーディ且つスリリングに見せてゆく展開は見事だと思う。
しかし、途中まで来て俺は迷った。「この儘このノリを楽しもうか、それとも物語全体を検証し乍ら観ようか」
俺に迷わせるスキを与えた事自体で、このネタでスピード自体に頼って映画を乗り切る事の無理があったという事だが、勿論それ以外の部分で俺をねじ伏せれば良かったのだ。しかしそうは行かなかった。この映画はただの高慢な若者が自分の才能で周囲を蹴落とし乍ら富を得るだけの話だったのだ。
この話のスゴさは実話であるという事だ。映画に数字が出てくる度に観客はそれが現実のものである事に思いを巡らせ、唸らざるを得ない。しかし俺はその度に吐き気を覚えた。
如何に主人公が傑出した才能の持ち主だといえ、如何に彼が不眠不休で自らの計画に没頭したからと言って、どうしてたった一人の人間にこれ程の富が許されてしまうのだろうか? ハーバード大学のサンデル教授が来日講義した時に「イチローの年棒が大統領より多いのは妥当か」というお題を出していたが、イチローだろうがホリエモンだろうが、才能があろうが努力しようが職責が重かろうが、一人の人間が100人や1000人分もの富を得るのはおかしいと思う。
会社や組織が2倍になれば、トップの収入は2倍になる。10倍になれば10倍に、1000倍になれば1000倍に…??
トップの「仕事」はどんどん減っているというのに? どこが「フェア」だ。何が正論か。まさに現代の専制だ。
ネットこそが「世界」という妄想が広がる事も危惧する。ムバラクをエジプトから追い出そうが、ネットが世界では断じてない。
数年前、一日中自宅の画面から株価を研究している「個人投資家」がTVで紹介された。妻子を抱えたその30男は「毎日毎日必死に働いても月収はやっと30万で生活がキツい」と言った。お前のやっている事が労働か。
脱線しました、失敬。
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