[コメント] おとなのけんか(2011/仏=独=ポーランド)
理屈が感情で勢いづくと、言い分が言いがかりになる。演技巧者が繰り広げる、そんな売り言葉に買い言葉の応酬が可笑しくてしょうがないのは、我々観客が、この深刻な事態の当事者ではなく、ずっと傍観者のままで居続けられるから。それが、ポランスキーの技。
台詞のテンポに合せて緻密に組み立てられた無駄のないカット割り。フレーム内に重層的に納められた複数の人物の表情やしぐさ。携帯電話、美術書、ウィスキー、ドライヤー、チューリップ、ハムスター!といった「モノ言わぬ」脇役たちの饒舌さ。息つく間のない事態の進行や、ころころと変転する4人の立ち位置。しかし、観客は誰にも感情移入しない(できない)ように巧妙に計算されている。だから、80分間安心して大笑いできるのだ。観るものを心地よく蚊帳の外に置き去りにする技ありの1本。
とは言え、感情移入しなくていいぶん、テクニックだけで中味は空っぽだけど。
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