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[コメント] アメイジング・スパイダーマン(2012/米)

全体的にはOKなんだけど、監督としてのマーク・ウェブの個性が、このシリーズにそぐわないと感じる人もいるだろうなとも思う。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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前シリーズとの対比(できればこんなことはしたくないのだが、しかし今作に限っては、そういった目線でも評価されることは仕方ないことだと理解されたい)において、まず一番に驚くことは、主人公ピーターの圧倒的なダメダメぶりである。特にスパイディな変身をとげた当初の彼の行動の数々は、とても進学校で2番の成績をおさめている秀才とは思えないようなイケイケ的なものであるのだが、けれど、より原作に即した形で、そういった脱超人的な、少なからず人間ピーター・パーカーの個性を前面に打ち出した路線がその後も全篇を通して表現されるのは、特に精神面において人としての己を超えることができない主人公パーカーのキャラクター構築という点において、前シリーズ以上にとても親近感が持てるというか、対比上においても、最も優れている点だと思った。

また、そういった等身大の普通の少年であるピーターだからこそ、父母がわりとしての伯父、伯母との関係や友人関係、あるいは恋人とその父との関係に悩む人間ドラマとしての今作の展開が生きたと思う。特に恋人であるグウェンに、早々にして『スパイダーマン』としての存在をその目で知られるという展開は、これもまた前シリーズとの大きな違いなのだが、今作の展開上では、その設定だからこその恋愛ドラマとしての側面が栄えたと思うし、そのあたりは前作で『(500)日のサマー』という傑作を撮ったマーク・ウェブのならではの、真骨頂的な演出の冴えであったと思う。

また、今作では、ウェブ・シューター(蜘蛛の糸が出るカートリッジ)が、原作どおりピーター自作の装置として登場&活躍するのも個人的にはツボであった。これはパンフレットにも書かれていたのだが、原作にはカートリッジとしての蜘蛛糸の容量がなくなり、『スパイダーマン』が苦戦を強いられるという、日本の昭和40年代の超人ものにあったような展開もあるようで、そのあたりは今後の楽しみとして期待しておきたいとも思った。

が、そういういい面も十二分にあった反面、画的な面白さという点では前シリーズの監督であるサム・ライミに軍配を挙げたいというのも正直なところである。特に今回は、前シリーズ第1作でのあの印象的な雨の中でのマスクをめくってのキスシーンみたいな、とにかく画的に圧倒的な印象を残すシーンというものには欠けていたように思った。

また、音楽の使い方に関しても、こういった大作では、もっと大胆に、それこそ前シリーズのようにロック系の曲がガンガン鳴り響くくらいのほうが雰囲気だったんじゃないか等々、マーク・ウェブゆえの繊細さがかえって弊害となっており、その個性がこのシリーズにそぐわないと感じる人もいるだろうなと思ったというのも本音ではある。

がしかし、少なくとも自分には本作は十二分に楽しめた作品であった。また、ラストにも次作を匂わす展開が残されたし、例の伯父を撃った犯人もまだ捕まってないことでもあるから、そういった次作への大いなる期待も込めて、やはりファンとしては最高点を献上せずにはいられないというのが現在の心境である。

(評価:★5)

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