[コメント] 仁義なき戦い 代理戦争(1973/日)
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執拗なまでに原爆ドームを映し出すラストが印象的だった。1のレビューで、ピカ(原爆)の描写は(戦後日本の荒廃を生んだ)本当の敵がアメリカであることの象徴ではないか、と書いたが、むしろアメリカ人とか日本人とかいった表層的なレベルを超えた、人間の愚行の象徴として、取り上げられているように感じた。
ヤクザ世界といっても、ほとんどの男は(別に女性に含む所があるわけじゃないが)"女の腐ったような"男である。"男の中の男"と呼べる男は、ほんの一握りしかいない。そんな数少ない本物の男と男が、肚を割って話し合えば、あらゆる些事を乗り越えて、真に実りのある話ができそうなものだ。だが、そうはならない。それは、それぞれに立場や都合があるのだろうが、それ以上に、否、まさにそうであるがゆえに、人間の愚かさの現れに他ならない。
初めのうち、新・山守組の重要幹部として、頻繁に顔を付き合わせていた武田(旭)と広能(文太)だが、最後は一本の電話線を介して話をするようになっていた。米ソ冷戦時代、両国首脳間を結ぶ"ホットライン"は、平和の為の切り札的存在であったが、むしろここでは、距離を置きやがて対立し離れ離れになっていく二人の、最後の頼みの綱みたいな存在であった。これが切れてしまえば二人は完全に決裂だ。次作(頂上作戦)まで観たわれわれは知っているのだが、もう一回、二人が電話で話すシーンがある。そしてその後、二人がようやく顔を突き合わすのは、寒風吹きすさぶ拘置所の廊下でである。「間尺に合わないことをした」そんな感慨は、実際に戦いの中に身を置き、そこを生き抜いてきた者でないと分かりえない境地ではあろう。だが、少しでもそんな感覚を追体験させてくれることが、広島の極道戦争を活き活きと再現したこのシリーズ映画を観る事による、一つのメリットであるように思った。
80/100(02/12/15記)
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