コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ゴーン・ガール(2014/米)

ファーストショットから“映画”。今どきのミステリーってこんなに進化してるんだ!
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ファーストショットが − ラストショットと同一でその意味する所(観客に与える印象)が全然違うという見事な映画的仕掛け − もう何だかとっても映画的で、そこからハート鷲掴みされたんです。ふわっと振り返るロザムンド・パイクの顔を画面いっぱいに映し出し「うわー、俺いま映画観てる!」って気にさせてくれる。ちょっとゴダールの『軽蔑』も想起させる。冒頭から見事な映画。

えーっと、ここから本筋と関係ないことを延々語りますよ。しかもヒドいネタバレだから、未見の人は絶対に読まないでね。

ロザムンドのシャワーシーンで、血が流れこむ排水口を一瞬写しますね。これはきっと『サイコ』を意識したショットだと思うんです。だって、全然必要ないカットなんですもの、それはもうワザとやってるとしか思えない。 それで確信したのですが、この映画、あちこちに“ヒッチコックの香り”をふりまいているように見えるのです。 女が逃げこむ先がモーテルであることは『サイコ』ですし、女が髪の色を変えて別人になるのは『めまい』です。そもそもロザムンド・パイクがヒッチ先生好みのブロンド美人だし。 いやもう、この話の基本プロットそのものが『めまい』の本歌取りなんですよ。 実際フィンチャーは、『パニック・ルーム』のオープニングで『北北西に進路を取れ』をやって、そのプロットで『裏窓』の本歌取りしたことがありますしね。

これはね、模倣やパロディーではなく、オマージュでもなく、再構築なんですよ。 何を感心したって、ミステリー(正しくはサスペンスか)がこんなにも進化しているということ。 内田樹先生によれば、村上春樹「羊をめぐる冒険」はレイモンド・チャンドラー「ロング・グッドバイ」の本歌取りで、その「ロング・グッドバイ」はスコット・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」の本歌取りで、「ギャツビー」はアラン・フルニエの「ル・グラン・モーヌ」の本歌取りだということなのですが、こういう形で“進化”していくんですね。

この映画は、ヒッチコック・サスペンスの進化系なのです。ま、『ゾディアック』でも同じようなことを書きましたけどね。 最近の映画界や音楽界はリメイクやカヴァーが流行っていますが、それが主流になると先細りすると思うんです。 フィンチャー(あるいは脚本も兼ねた原作者)みたいな“進化させる才能”がもっと出てこないと。

(14.12.26 ユナイテッド・シネマとしまえんにて鑑賞)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (8 人)まー[*] ベルガル IN4MATION[*] moot プロキオン14[*] セント[*] ぱーこ[*] ドド[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。