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[コメント] ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション(2015/米)

いままでのシリーズの中で一番面白かった。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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その場の機転が物を言うスタンドプレーヤーの007をトムがやりたいという意向と、作戦全体の中の命令されたことに対し、請負職人がチームワークでタイムリミット内に解答するところが面白い「ミッション・インポッシブル」シリ―ズであるという矛盾をかかえ、組織内裏切りだとか、ゴーストプロトコル発令だとか、これまでIMFの扱いにずっと無理が生じていた本シリーズだったが、なんと序盤でついに解体。イーサンが自分で自分に命令を下すような、組織活動が肝のスパイ物でありながら、組織自体を否定するような内容ばっかりをやってきた本シリーズだったが、やっと縛りがなくなってすっきりしたと思う。

3作目でおおがかりなドンパチより、ラストの全力疾走のほうが評判がよく、以来どれだけ体を張ったスタントアクションを代役なしでやれるかに、007はじめその他のアクションものに対しての、本シリ―ズの存在意義を見出したプロデューサーでもあるトムは、4作目からはすっかり「トムクルの限界に挑戦!」的な見せ場ありきの作品作りに傾注していくのだが、無理な見せ場の創出が、えてしてその場しのぎの徒手空拳的なシチュエーションになってしまうことで、トム本人がやっている以外は007とほとんど変りなくなってしまっていたのが難であった。今回の冒頭の軍用機のアクションがその例で、凄いなとは思うけど、やっぱり本シリーズの本質ではない。「何が起こるのかわからない」面白さではなく、「何をするのかあらかじめ提示されていて、それがどうやって成し遂げられていくのか」を見せるのが、「ミッション・インポッシブル」なのである。そこへ行くと、あの巨大プール内からデータを盗みだすあのミッションこそが、本シリーズの醍醐味。つまり命令(問題)が出され、それに対しどう解答していくか請負人としての腕前を見せる図式にそっている。IMFという組織がなくても、IMFが解体したればこそ可能になった「他のスパイの仕事を請け負う」という形をとれば、「ミッション・インポッシブル」的な見せ場にそった上で、トムの限界に挑戦的なこともできるという、これはいいアイデアだったと思う。このシークエンスがなかったら、あとはバイクのアクション、ナイフの格闘技、人間爆弾…シリーズのアイデンティティは難しかったと思う。

本作がシリーズで一番楽しめたのは、ヒロインと適役のキャラの好演も大きいが、一番は制作の悩みの種だったIMFをそうそうに解体しながら、ストーリー的に無理なく「命令」と「請負」という、「ミッション・インポッシブル」ならではの決定的な見せ場をひとつ作れた、そしてその出来がよかった、という点が大きかったことと思う。IMFなんてとっとと解体しちゃえば良かったのに、と思いつつも、じゃ、仕込みの機材や資金のサポートはどうやって受けてたんだよ?そんなにストックがあんのか?というところは気になるが。

007が、『007 スカイフォール』で、「M」にレイフ・ファインズを迎え、トラディショナルな長官室に回帰、Qとマネ・ペニーのキャラ付けもようやくシリーズの原点に復帰したように、本作でIMFをいったんリセットし、アレック・ボールドウィンを招聘(激太りだが)、流動的だった前作からのメンバーキャラも板についてきて、これでイルサが帰ってきて待望の女性メンバー加入となれば、このメンバーでの「スパイ大作戦」的な世界をこれからも見てみたいという気にさせる、そういう期待が持てる終わりもいい。

だとしたら、アレック・ボールドウィンを少し間抜けに描き過ぎたところは次回で修正が必要だろう。完全な神輿じゃ、結局イーサンが自分で命令を下して実行してしまうというこれまでの矛盾をかかえた形に戻ってしまうから。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ゑぎ[*] ロープブレーク[*] MSRkb[*] けにろん[*] プロキオン14[*] セント[*] シーチキン[*]

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