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[コメント] 家族はつらいよ(2016/日)

「さあ、今から笑うぞ」という心構えが肝心。保守主義とは市民に努力を求めるもので、この昭和印の喜劇も観客の「笑い」への積極的な参加を要求する。それさえ了解できれば、あとは山田ブランドに疑問をはさまず伝統芸に身をゆだねるのが、本作の正しい鑑賞法。
ぽんしゅう

館内は、前期高齢者とおぼしき女性たちであふれかえっていた。この方々、いささか「笑い」に対するハードルが低い。「箸が転んでもおかしい年頃」に年齢制限は存在しないようで、この方々、思春期の娘のように笑う気満々で映画館に押しかけているようだ。

喜劇映画を観て笑うのは結構なことで、別段それに文句はない。ただ、この方々、笑いながら「あら〜、だめじゃないの!」とか「もう〜、バカなんだから!」とか、ひとり言を言う。けっこう、大きな声で・・・。すると、別の“この方々”が「そーよ、そーよ」とか「だから、言ったじゃない」とか、ひとり言に反応しだすのだ。

かくして、館内は爆笑とともに無意識の私語の嵐となる。その秩序を失った公共空間に動揺し、私の意識はしばしスクリーンから遊離するのだった。でも、しかたない。この映画は、こうして鑑賞されるべき映画なのだ。“この方々”が全面的に正しい。空気を共有できない私が悪いのだ。

(評価:★3)

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