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[コメント] 砂の器(1974/日)

原作の香りを失わずに原作をこえている!これは推理ドラマではない人間ドラマだ。
斎藤勘解由

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今西(丹波哲郎)と吉村(森田健作)は亀嵩を秋田県の亀田町の事だと思い捜査する。しかし、一向に手がかりは掴めない。二人は疲れ果て日本海見て呟く 吉村「色が濃いみたいですね」 今西「(頷く)」 吉村「太平洋の方だともっと浅いですよ。何か濃縮された感じだな」 今西「・・東北なんだね」 このシーンは何気ないシーンだが橋本忍はここで前振りをしたのではなかろうか?・・この事件はそんな浅く単純な事件じゃない。もっと深い何かが裏にあるんだよ。そのような意味のあるシーンだったのではなかろうか。

松本清張の原作と比べてみると実に大胆に脚色されていることが分かる。 和賀は原作ではもっとドライだが映画では苦悩する芸術タイプ。三木巡査緒形拳は原作の簡単な記述から肉付けして人間味ある人物に。注目すべきは原作で亡くなった筈の千代吉が生きているそれが和賀の殺人の動機にリアリティを与えている。また原作で犯人臭い関川という音楽評論家をカットしている。

御覧になった方はお気づきになっただろうか・・今西がラスト捜査会議が開かれ演奏が始まってからいつの間にか和賀加藤剛の気持ちになって旅の部分を見せていく見ている者はいつの間にか和賀と千代吉加藤嘉に同化しているのである。

確かに島田陽子演ずる高木が絡む箇所とか首をかしげたくなる部分も脚本にはある。しかし、ストーリーとして辻褄が合わなくてもドラマそれ自体の世界でまとまっていれば少々の矛盾があっても気にならないものだ。 脚本の妙である橋本忍山田洋次あっぱれ!

(評価:★5)

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